宇宙にはロマンがある!
そんなことを言う人が最近どんどん増えてきているような気がします。
昔からSFやアニメーションみたいな想像の世界では沢山描かれてきている宇宙も、技術の進歩によって身近になっているのが理由かなと思います。
ですが、「はやぶさ2」が小惑星に到着!とか、ブラックホールの撮像に成功!とかニュースで見ても、
すごいな~と思うだけで、実際何がすごいの?と思う方も沢山いるんじゃないでしょうか?
そこで今回は、「はやぶさ2」の何がすごいのか?を分かりやすくまとめてみました!
Contents
「はやぶさ2」って何?ミッションて?

正式名称を『小惑星探査機「はやぶさ2」』といって、2010年6月に小惑星イトカワから地球に帰還した「はやぶさ」の後継機になります。
- 太陽系がどうやって出来たのか。
- 私たち生命がどうやって形作られてきたのか。
そんなロマン溢れることを分析・解明するために、むかーしの地球の姿であろうC型小惑星「Ryugu(リュウグウ)」から、サンプル物質を持ち帰ってくることをミッション(目的)としています。
C型小惑星には、有機物や水が含まれていると考えられているので、持ち帰ってきたそれらを分析すれば、地球誕生や生命の起源を解明することができると考えられているんです。
この小惑星サンプルリターンは「はやぶさ」が世界で初めて成功させましたが、その劇的なストーリーがとても話題を呼びました。
で、「はやぶさ」での経験を活かして、より確実にミッションを達成できるよう、「はやぶさ2」には様々な新しい技術を搭載しているんですね。
2014年12月に種子島宇宙センターから打ち上げられ、現在(2020/3/19)は既に、目標の小惑星リュウグウに到達して、地球に帰還中となっています。
質量 | 約600kg |
打ち上げ | 2014年12月3日13時22分(H-IIAロケット26号機) |
軌道 | 小惑星往復 |
小惑星到着 | 2018年 |
地球帰還 | 2020年 |
小惑星滞在期間 | 約18ヶ月 |
探査対象天体 | 探査対象天体 地球接近小惑星 Ryugu (仮符号 1999 JU3) |
主要搭載機器 | サンプリング機構、地球帰還カプセル、光学カメラ、レーザー測距計、 科学観測機器(近赤外、中間赤外)、衝突装置、小型ローバ |
「はやぶさ2」の何がすごい?搭載されている機器は?
「はやぶさ2」は主に以下の2つの分類で機器が搭載されています。
- ミッション機器
- バス機器
なんだそれ?って感じなので、一つずつ見ていきましょう。
ミッション機器
ミッション機器はその名の通り、「はやぶさ2」が己のミッションを達成するために用いる機材たちのことを指します。
機器名 | 目的・特徴 | 特記事項 |
---|---|---|
多バンド可視カメラ | 探査機の航法誘導のための撮影や、小惑星の科学観測を行う。 | |
レーザ高度計 | 探査機から小惑星表面までの距離を測る。 | |
近赤外分光計 | 鉱物の種類を調べる。特に、含水鉱物の分布を調べる。 | 3ミクロン帯の赤外線を観測。 |
中間赤外カメラ | 小惑星表面の温度分布を調べる。 | 「あかつき」に搭載したカメラと同等。 |
サンプル採取装置 | 小惑星から表面物質を採取する。弾丸を小惑星表面に打ち込むことで、表面を砕いて物質を採取する。 | 「はやぶさ」で用いたものを改良。 |
地球帰還カプセル | 採取したサンプルを、大気圏再突入の時の熱から守り、地上に届ける。 | |
衝突装置 | 小惑星に人工クレーターをつくる。重さ2kgの銅を秒速約2km/sで小惑星表面に打ち出す。 | 世界初の挑戦。 |
分離カメラ | 衝突装置によってクレーターが形成される様子を撮影する。 | 「イカロス」の分離カメラの考え方を基本として改良。 |
モニタカメラ | サンプラーホーンの先端を撮影する。 | 寄付金により製作。 |
小型ローバ(MINERVA-II) | 小惑星に着陸して、ホップして移動しながら表面の観測を行う。 | 3台搭載の予定。 |
小型着陸機(MASCOT) | 小惑星表面に降りて、4つの観測機器により小惑星のデータを取得する。 | ドイツ(DLR)およびフランス(CNES)を中心に製作。 |
めちゃくちゃ多い!
多すぎて全部を紹介していくと果てしなく長くなるので、
この中で、自分が個人的に注目したいなと思ったものを取り上げようと思います。
それは、「衝突装置」と「小型ローバ(MINERVA-Ⅱ)」です。
これは何故か、簡単に説明していきます。
衝突装置
- 「はやぶさ」には無かった装置で世界初!
- サンプルリターンのために起動するメイン装置

重さ2kgの鋼の塊(衝突体:ライナ)を小惑星の表面に2km/sで衝突させて人工のクレーターを作る衝突装置。
これによって、小惑星の表面の変化から内部の構造まで探査することができます。
出来上がったクレーターからサンプルを採取して小惑星表面のサンプルとの違いも比較することができます。
勝手に思ってることですが、なんか一撃必殺の武器的なイメージがあります。
パイルバンカーとか大好きなんですよね笑
小型ローバ (MINERVA-Ⅱ)
- 「はやぶさ」時代でのイトカワ着地失敗を受けた後継機
- 小惑星表面を探査する超小型自律ロボット=カッコかわいい

小惑星の表面に降り立って、自律的に移動して探査を行うことの出来るローバーと呼ばれる機器。
「はやぶさ」時代に搭載されていた初号機は、通信機器の不具合によって残念ながら着地失敗してしまいました。
その想いを継いで、「はやぶさ2」に搭載されたのが MINERVA-Ⅱ (ミネルバⅡ)!
設定が燃えます笑
実は彼らは 「MINERVA-II1」と「MINERVA-II2」という兄弟構成をしており(ミネルバ って女神の名前だから姉妹?)
それぞれがホップして移動することで表面の探査を行います。
これは、ローバー内部にあるモーターを回転させることで、そこから生じるトルクを利用してちょこんっと浮き上がらせています。
その浮き上がっている間に、小惑星の表面をカメラで撮影して観測を行ってるんですね。
ハロとルンバを足して2で割ったみたいに見えて、結構かわいく見えてしまいます笑
バス機器
バス機器とは、衛星自身の挙動を制御したり、地球との通信を行うために用いる機材たちのことを呼びます。
機器名 | 目的・特徴 | 特記事項 |
---|---|---|
イオンエンジン | 探査機の軌道制御を行う。キセノンのプラズマガスを高速で噴射する。 | 「はやぶさ」のものを改良。推力を増強し、耐久性を強化。 |
化学エンジン | 探査機の姿勢や軌道制御を行う。燃料と酸化剤を燃焼させる化学反応を利用する。 | 「はやぶさ」や「あかつき」の経験より改良。 |
姿勢制御装置 | 探査機の姿勢をコントロールする。 | リアクションホイールは4台搭載。 |
通信アンテナ | 探査機と地球との通信に使う。X帯とKa帯の電波を用いる。(Ka帯は新規) | 「あかつき」の平面アンテナを採用。 |
この中で、「はやぶさ」から変更点のあった「イオンエンジン(電気推進)」「化学エンジン(化学推進)」「通信アンテナ」について簡単に説明しようと思います。

- 4つ固まって付いているスピーカーみたいなものがイオンエンジン
- 隅に付いている小さいラッパみたいなものが化学エンジン
イオンエンジン(電気推進)
- 「はやぶさ2」が宇宙を航行するときのメインエンジン!
- 実は気体を吐き出して進んでいるのではない!
- 推力が弱いけど、めっちゃ長寿命!
地球から小惑星へ、小惑星から地球へ、長い旅を「はやぶさ2」が航行していくときにメインのエンジンとして働くのが、この「イオンエンジン」です。
イオンエンジンは電気推進系と言われ、イオン源と中和器の2種類を1セットとして、4セット取り付けられています。
キセノンという気体をマイクロ波によってイオン化して、それらを電気的に加速させた際の反力で推力を得ています。
まあ、プラスの電気とマイナスの電気って引き合いますよね?あの電気的に引っ張られている力を推力に変えている、という理解で大丈夫だと思います。
『何かしら気体を吐き出して、その反力で進んでるんでしょ?』と思っている方が一定数いらっしゃいますが、それはロケットエンジンや化学エンジンのことで、イオンエンジンとはまたちょっと違うんですね。
一般的な燃料を用いる化学エンジンとかに比べて、イオンエンジンは10倍も燃費が良くて、かつ高寿命です。
「はやぶさ」時代には累計4万時間もの運転時間を達成して、世界最長の記録を持っています。が、「はやぶさ」は実際の航行時に1万時間~1.5万時間の間で中和器の故障が発生しています。
「はやぶさ2」ではそれらの対策もしっかり行って、長寿命化を図っているんですね。
ですが、めちゃくちゃ長寿命なだけに、推力は化学エンジンよりも弱くなっています。
そう聞くと、ちゃんと進めるのか心配になる人もいるかもしれませんが、宇宙空間は無重力なので、推力が小さくても十分進んでいけます。(10mNくらい。化学エンジンと比較してみてね)
それぞれの長所短所を上手く補いあっているわけです。
化学エンジン(化学推進)
- 姿勢の制御や軌道の微調整に使われる着陸の要!
- 化学反応で気体を発生させて、噴射して作動する
さっきから先走って話題に挙げまくっていた「化学エンジン」。
こいつは気体を噴射することで、探査機がちょっとバランスを崩したときに支えてあげたり、進行方向がずれているときに調整したりしてくれます。
友達に一人くらい欲しい。
化学エンジンは、「はやぶさ」時代と同じように燃料と酸化剤の2種類を混ぜ合わせて化学反応を起こし、発生する気体を使って推力を得る2液式という方法を採っています。
20Nの推力を得られる「スラスタ」と呼ばれる小さいラッパみたいなものが12基搭載され、探査機を守っています。(イオンエンジンは10mNでしたね。)
「はやぶさ」の時には異物が詰まったり、配管が凍結したりで数々のストーリーを生み出した彼も、「はやぶさ2」ではしっかり対策され、万全の体制となっているようです。
通信アンテナ
- 地球との通信や観測データの送信を行う重要な役割
- X,Kaバンド2つの高利得”平面”アンテナ
- 非常用の中利得・低利得アンテナ

- X,Kaバンド高利得アンテナ
- Xバンド中利得アンテナ
- Xバンド低利得アンテナ
(引用元:http://jda.jaxa.jp)
「はやぶさ2」を見たときに、なんか2枚の円板くっついてない?と思った人も多いのではないでしょうか?
実はこれが、地球との通信を司っている「高利得平面アンテナ」です。
周波数が8.4GHz(Xバンド)と、32GHz(Kaバンド)の2種類の電波で通信ができるよう2つ搭載されています。
平面にしたことによって、同性能のパラボラアンテナと比べて重さが4分の1となり、2つ搭載しても「はやぶさ」の時のパラボラアンテナより軽くなっています。
「はやぶさ2」になり、初号機からKaバンドのアンテナが追加されました。KaバンドはXバンドよりも周波数が高いため、より多くのデータを高速で地球と通信ができます。
また、2種類の電波を使って通信を行うことで、片方が故障した際にもう片方が機能する冗長化の意味合いもあるんです。
アンテナには指向性という性質があります。簡単に言えば、通信する方向を制限すればするほど、良く電波を拾えるようになります。
高利得アンテナはこの指向性が狭いため、ある特定の方向を向いているときにしか通信ができません。
ですが、さらに指向性を広くした中利得・低利得アンテナを搭載することによって、探査機の姿勢によらず地球との通信が行えるようにしています。(低利得は全方向通信可能:無指向性アンテナ)
これが、非常用の中利得・低利得アンテナ、と言った理由です。
「はやぶさ2」の現状
「はやぶさ2」は2018/6/27に小惑星リュウグウに無事到着した後、2019/11/13にリュウグウを出発して地球へ帰ってきている最中です。
リュウグウに滞在していた日数は504日間だったそうです。
JAXA はやぶさ2プロジェクトのホームページでは、「はやぶさ2」の現状や、「はやぶさ2」から送られてきたリュウグウの画像などの成果を見ることができます。
JAXA はやぶさ2プロジェクトのホームページ2020年12月に帰還が予定されている「はやぶさ2」。
ボロボロになりながら帰ってきた初号機からこれまでに紹介してきたような改良がされて、
今は何も問題なく航行を行ってますが、まだ安心できません。
帰るまでが遠足って良く言いますからね。
ただやっぱり、竜宮城から持って帰ってきた玉手箱が、どんな恩恵を私たちにもたらしてくれるのか、今から楽しみです!
この記事で紹介した内容は、「はやぶさ2」の凄さの一端にすぎませんが、
皆さんがこれを読む前より、ちょっとでも深く興味を持ってもらえれば幸いです。
皆さんも、小惑星探査なんてどうですか?
コメント