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自然界における4つの力の起源~「なぜ」を繰り返した末に~

天文

人類は、身の回りのことについて当たり前だと思う傾向があります。

​落としたものは地面に当たるまで下に落ちる。しかし、地面をすり抜けたりはしない。

これらは当たり前であり、特に考えなくてもそういうものとして私たちは理解しています。

しかし、誰かが、これはなぜだろう、と疑問に思ったことがきっかけで、少しずつ世の中のことは解明されていきました。

 ​落としたものが下に落ちるのは、地球があらゆるものを地球の中心に向かって引っ張っているから。

そして、「なぜ」を繰り返し、その過程で得られた知識を基に、科学は今日まで発展してきました。

例えば、水力発電は水が下に落ちるときのエネルギーを利用して電気を作っています。

一方で、「なぜ」を繰り返していくと、どこかで答えがなくなってしまいます。

小さい子供のなぜなぜ攻撃に対し、答えに窮した経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

地球があらゆるものを下に引っ張っているのは、重力という力があるからです。

ではなぜ、重力という力が存在するのでしょうか。

現在の物理学者たちの中には、このような問いに対して答えを出そうと日夜研究を続けている人もいます。

今回は、この宇宙における重要な謎の1つ、自然界の4つの力の起源について紹介します。

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自然界の4つの力とは

「力」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

例えば、ダンベルを持ち上げるときに必要な力について考えてみます。

ダンベルは、地球の重力により下に向かって引っ張られています。

その力に逆らってダンベルを持ち上げるためには、ダンベルが落ちないように手で支えなければいけません。

では、ダンベルが手をすり抜けて床に落ちるのを防いでいる力は何でしょうか。

答えは、電磁気力です。

私たちの身の回りのものは、すべてたくさんの「原子」という非常に小さな構造からできています。

さらに、その原子は「原子核」と「電子」からできています。

原子核はプラスの電気を帯びていて、原子の中央に存在します。

一方、電子はマイナスの電気を帯びていて、原子核の周りを飛び回っています。

電磁気力の性質として、プラスとプラスの電気、マイナスとマイナスの電気は反発しますが、プラスとマイナスの電気は引き合います。

ダンベルが手をすり抜けて床に落ちるのを防いでいる力は、ダンベルと手を構成している原子の周りの電子がマイナスの電気を帯びていることにより、互いに反発しあう力なのです。

このように、自然界における力は、小さく分解していけばすべて4つの力で説明できるといわれています。

それは、「強い力」「弱い力」「電磁気力」「重力」の4つのことです。

これらの力は、これ以上の分解はできないとされており、この宇宙のすべてを支配する法則でもあります。

まずは、それぞれを説明していきます。

強い力

強い力は、電磁気力や重力と比べると、あまりなじみがないかもしれません。

しかし、原子が存在するためには必要不可欠な力なのです。

原子はすべて原子核と電子からできていると述べましたが、原子核もまた「陽子」と「中性子」に分解できます。

さらにその陽子と中性子は、クォークに分解できます。

クォークは、電子と同じくそれ以上分解できません。

クォークは6種類存在しますが、陽子と中性子はそのうちの2つ、「アップククォーク」と「ダウンクォーク」からできています。

陽子はアップククォークが2つにダウンクォークが1つ、中性子はアップククォークが1つにダウンクォークが2つからなります。

そのクォーク同士を結合しているのが、強い力です。

また、そのおまけとして、陽子と中性子の間に相互作用を発生させることで、陽子と中性子も結合しています。

陽子同士が電磁気力により本来反発しあうところ、それに逆らって陽子を原子核に繋ぎ止めているため、「強い」力と呼ばれているのです。

そのため、もし強い力がなかったら原子が存在できず、私たちの身の回りのものすべてが存在できなくなります。

ただし、強い力は有効範囲が非常に狭く、わずか0.000000000001ミリメートル程度しかありません。

原子核も同程度の大きさですが、このように非常に小さな領域でしか働かないのが、強い力です。

弱い力

弱い力も、あまり耳なじみがないかもしれません。

弱い力は、クォークの種類を変えることができます。

例えば、ニュートリノという素粒子が特定の種類の原子核中の中性子の近くを通ると、中性子のダウンクォークとニュートリノの間に相互作用が働き、ダウンクォークがアップクォークに、ニュートリノが電子に変化することがあります。

この相互作用こそが、弱い力です。

ダウンクォークがアップクォークに、ニュートリノが電子に変化する現象は、β崩壊と呼ばれ、放射線の1種であるβ線(電子)を発生させます。

このように、弱い力は放射能と密接な関係があります。

弱い力は、私たちの日常生活において直接目にすることが少ないです。

しかし、弱い力は宇宙の重要な謎のうち1つを解くための鍵を握っている可能性があります。

その謎は、「なぜこの宇宙では反物質がまったく観測されないか」、です。

「反物質」とは、普通の物質と全く同じ性質を持ちますが、帯びている電気だけ反対になっているもののことです。

詳細な説明は別の記事に譲りますが、現在の理論では、宇宙誕生の瞬間に普通の物質と同じ数だけ反物質ができたはずだとされています。

しかし、現在の宇宙では反物質はまったく観測されません。これがなぜかは、未だに解明されていません。

なぜこれに弱い力が関係しているのかというと、実は弱い力は4つの力のうち唯一、物質と反物質で実験の結果が異なることがあると分かっているからです。

今はまだ弱い力は物質と反物質を別々に扱うという事実が判明しているのみですが、さらに研究することにより、この宇宙で反物質が観測されない理由がわかるようになるかもしれません。

電磁気力

私たちの身の回りの力のうち、重力以外の力は電磁気力です。

先に説明したように、プラスとプラスの電気、マイナスとマイナスの電気が反発し、プラスとマイナスの電気は引き合います。これを電気力と呼びます。

また、磁石のN極とS極が引き合うのも電磁気力の一部で、磁気力と呼びます。

電気力と磁気力は同じ力であり、2つをひっくるめて電磁気力と呼んでいます。

物体同士がすり抜けないのも、電子が原子から飛び出さないのも電磁気力の影響によるものです。

重力

重力も私たちに身近な力の1つです。

質量をもつすべての物体が、互いに引き合う力が重力です。

(実は、重力に関してはそれだけでは説明できない現象が多々存在するのですが、これについても解説は別の記事に譲ります。)

強い力、弱い力と違い、電磁気力と重力は有効範囲が無限大です。

そのため、私たちの身の回りのもののように、原子核より大きいスケールでは電磁気力と重力が支配的になります。

しかし、電磁気力と重力では力の強さが全く異なります。

例えば、磁石は地球の重力に逆らって、ものを持ち上げることができます。

一方で、普段は忘れがちですが、地球は想像がつかないほど重いです。

約6000000000兆トンの地球が及ぼす重力の影響は、ほんの数十グラムしかない磁石が及ぼす電磁気力の影響に負けてしまいます。

弱い力も電磁気力と比較するとはるかに弱いですが、重力と比べると圧倒的に強いです。

なぜ重力だけがこんなに弱い力なのかも、この宇宙における重要な謎の1つです。

4つの力が、なぜこのような仕組みになったのか

さて、これまで自然界における4つの力について説明してきましたが、それぞれまったく異なる性質を持つことが分かります。

強い力と弱い力は有効範囲があるのに対し、電磁気力と重力にはそれがない。

弱い力だけ物質と反物質を区別する。

重力は引き合う力のみ存在し、電磁気力や強い力のように反発する力がない。

力の強さは強い力>電磁気力>弱い力>重力である。

このように、力が働く仕組みがバラバラだということが分かります。

しかし、この4つの力は約137億年前、宇宙の誕生の瞬間からほんの少しの間だけ、同じ力だったとされています。

宇宙の誕生、すなわちビッグバンの瞬間から、重力、強い力の順に分離していき、最後に電磁気力と弱い力が分離したのがビッグバンからおよそ0.000000000001秒後。

なぜ、統一された力が4つに分離したのか。

その4つの力が、なぜこのような仕組みで働くのか。

これが、この宇宙における最大の謎とも言われています。

つまり、4つの力の仕組みはある程度分かっていても、なぜこの仕組みになったのか、についてはまったく分かっていないということです。

4つの力が分離したときに、それぞれの仕組みがこの宇宙のものとは別の仕組みになっていた可能性もあるかもしれません。

しかし、もしそのようなことが起きたら、この宇宙の景色は今とはまったく異なるものになっていたでしょう。

強い力が今よりほんの少し弱かったら、電磁気力に打ち勝つことができず、原子核が存在できなかったかもしれません。

重力に反発力があったら、星間ガスが一か所に集まらず、星が存在しなかったかもしれません。

言い換えると、原子核や星などが存在するために最適な仕組みが、この宇宙の4つの力の仕組みだということです。

なぜ、このように都合良く、4つの力の仕組みができているのでしょうか。

偶然にしては、できすぎだと思う物理学者も多いです。

しかし、子供のなぜなぜ攻撃にあっている大人のように、今はまだ解明の見通しすら立っていません。

この宇宙は実はコンピューター上のシミュレーションなのではないか、という仮説が真面目に検討されることもあるくらいです。

現状では、電磁気力と弱い力を統一した電弱力という理論は完成したと言われ、それと強い力を統一する理論の研究が続けられています。

その後に、重力も統一した「万物の理論」と呼ばれる理論が完成すれば、4つの力にかかわるこの謎も解けるかもしれません。

まとめ

科学とは、「世の中の仕組みを解明すること」とも言えます。

数万年をかけて、私たち人類は身の回りのことから徐々に解明する範囲を広げていき、現在では宇宙の解明にも挑戦しています。

それでもまだ、未解明な部分は数多く存在します。

今回はその中でも特に重要な謎の1つである、自然界における4つの力の起源を紹介しました。

宇宙の謎について、Daniel Whitesonというアメリカの物理学者の言葉を借りると、「We have no idea. (私たちは何も分かっていない)」だそうです。

宇宙の謎がすべて解明されるのは、まだ先のことかもしれません。

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